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執筆者の写真Hiromi Takabayashi

NY de Volunteer のあゆみ

これまで多くのボランティアの方にご参加いただき、企業、個人の方から寄付やサポートを頂いているNY de Volunteer(以下、NYdVと表記)


その始まりは、小さな行動からだったが、長年運営を続けられているのは、確かなビジョンと地道な努力と多くのサポートがあった。


- はじまりはビーチのゴミ拾い


 1994年、ニューヨーク市にあるコニーアイランドビーチを訪れた日野紀子は、ビーチがゴミであまりに汚れていることにショックを受け、自発的にゴミ拾いを行った。最初は1人で拾っていたが、見ず知らずの人が日野に笑顔を向けてくれ、ゴミ拾いを手伝ってくれた。この話を友人の寺田和美(現・NYdV理事)に話すと、寺田は、そのエピソードに感激し、2人でボランティア活動を始めた。周りにも声を掛けると、参加を希望する人が意外と多くいて、一緒に活動をすることになった。最初は1回きりの活動のつもりだったが、参加者から次回開催を求める声が多く、2002年に組織化する。団体の名前は『NY de Volunteer』(NYでボランティア)。ボランティアをしてみたいと思っているけど、どうしたらよいかわからない人、ニューヨークで何かの最初の一歩を踏み出したい人に機会を提供するために設立された。NYdVの代表職に日野が就き、2003年にアメリカ国税局から501(c)(3) IRS Status(税金控除資格)を取得し、法人化する。


‐ 活動する度にプレスリリースをメディアに送り、問い合わせが100件を超える


 自発的に集まったメンバーで始まったNYdVだったが、団体となった以上、責任が伴う。日野は、「ボランティアをしてみたいという気持ちのある人がニューヨークで最初の一歩を踏み出せるためにどんな支援をすればいいのか?を真摯に取り組み続けた。常にボランティアをしたい人、ボランティアを求めている組織、受益者の為にできるベストが何かを常に考えていた。」と、当時のことについてこう振り返る。その為に最初に必要だったのは、呼びかけをするNYdVが信頼できると思ってもらえることだった。

 

 NYdVが想いと誇りをもって堂々と活動していることをわかりやすく伝えるため、すぐに運営スタッフとともにオフィシャルウェブサイトを立ち上げ、活動への参加募集や活動報告などに関するプレスリリースを毎回作成して、全ての日系メディアに送った。プレスリリースを送ったメディアに大きく取り上げられ、その結果、問い合わせ数は100件を超える。日野は、その一人一人と丁寧に会話をした。NYdVの認知度が上がるにつれて、ボランティア参加希望者も増えていくようになり、在ニューヨーク日本人コミュニティでは、「ニューヨークでボランティアするなら、NY de Volunteer」という認知が広がった。


-3枚の企画書がNYdVを大きく変えるー

コアプログラム”Explore Japanese Culture”の誕生


 NYdV設立当初の活動内容は、ニューヨークの公園や公共施設のお掃除をするボランティアだったが、次第にオリジナルのプログラムを企画するようになった。2004年に、シニア向けのビューティーサービス”Japanese Spa Day”を開始していたが、さらに、日野は新プログラムを構想していた。ボランティア活動の意義である社会問題の是正に挑み、日本文化を活かして出来ること、かつ、ボランティア参加者には、「体験・交流・学び」があるもの。そして、3枚の企画書を書き上げる。これが、NYdVのコアプログラム”Explore Japanese Culture”となる。


 ”Explore Japanese Culture”の目的は、「教育」を切り口にしたニューヨークの格差の是正だ。きらびやかなイメージの強い大都市ニューヨークでも、いまだに低所得者層・貧困層は多く存在しており、それを目の当たりにした日野と運営スタッフは、「全ての子供達に、質の高い教育を!大きな夢を見るチャンスを!」をモットーに、そのような子供達に多様性を伝える教育を提供することにした。これは、ニューヨークにおいてマイノリティである日本人達の挑戦だった。


 一年かけてニューヨーク市に提案した結果、ニューヨークのアフタースクール(日本の学童保育)で、”Explore Japanese Culture”を実施することを認可される。これには、お掃除ボランティアをメインで活動していた頃からNYdVの活動を応援し続けてくれたニューヨーク市の職員で、New York State Parks Recreation Centerのセンター長のスティーブン(当時)が大きく尽力してくれた。


- リーマンショックによる運営の危機

悩みながらも仲間と前進し続け、その貢献をNY市より3回表彰される。


 2008年、NYdVのコアバリューが明確になった矢先に、世界規模の金融危機・リーマンショックが起きる。それまでニューヨーク市から給付されていたグラントが、市の財政難により停止になってしまう。(これは、いまだに復活していない。)NYdVは、初めての運営危機に陥るが、それでもミッションを止めるわけにはいかないと、グラントが無い状態でも、プログラムの提供を続けた。同時に、この危機を乗り越えるべく、日野は、NPO運営をアカデミックに学ぶためにコロンビア大学が提供しているNPOマネジメント講座を受講する。講師のトムと受講生仲間のヴィンセントが、当時の日野のNPO運営に関する悩みやプログラムの在り方に対して、たくさんのアドバイスをくれた。長期間に渡りサポートしてくれた恩人で、日野が今でも感謝して止まない2人である。彼らのアドバイスと運営スタッフの懸命なプログラム活動の継続が功を制し、ニューヨーク市より、『Volunteer Appreciation Award』(2010 & 2011)、『Volunteer of the year』(2011)などのアワードを3回受賞している。



‐ 教育分野への新規事業拡大

グローバルスタディツアーで、日本の学生にグローバル経験を提供

 

 コアプログラム“Explore Japanese Culture”の運営が軌道に乗り始めた後、NYdVでは、日本の社会人や学生に対して、ニューヨークでの企業インターンや研修旅行の企画を取り組みを行っていた。個人からの依頼の都度、個別にカスタマイズしていたため、プログラム化はしていなかったが、この取り組みの意義の大きさを感じていた。数年後に思わぬ新規事業拡大の機会が訪れる。旅行会社から問い合わせがあり、高校生のためのスタディツアー(研修旅行)の企画を依頼された。日野は、NYdVがスタディツアーの企画に携わって、自分たちが提供できるバリューは何なのか、理事と運営スタッフ達と議論した。議論の末、”Explore Japanese Culture”を提供していることで培ってきた、受益者の教育に関する経験・ナレッジの豊富さ、多くのボランティア動員出来るマネジメント能力の高さ、ニューヨークの大学・高校とのネットワークの広さ、これらのバリューを活かして、日本の学校のスタディツアーの企画という教育分野へ事業を拡大していく。これをきっかけに、NYdVが日本の学生をグローバル人材に育成することに携わり始める。コアプログラムの一つである「グローバルスタディツアー」の始まりだった。この「グローバルスタディツアー」の提携先の学校は、年々増え続けている。

- 突如始まった日米運営体制、運営を支えてくれる多くの仲間 通算10,000人以上のボランティア動員達成!


 当時、日野は米国永住権を申請していたが、青天の霹靂でこれが却下され、日本への帰国を余儀なくされる。そこで、NYdVの代表職をTaka Jubaに引き継ぎ、日野は理事の一人として、日本から運営を支えていく立場となった。突如訪れた運営の日米体制だったが、日本にいる日野と在ニューヨーク側の理事達、Taka Juba代表(当時)率いる運営スタッフ達と連携を取り、プログラムはさらに進化していく。日系アメリカ人であるTakaのネットワーキングもあって、提携先が広がり、ボランティア動員数は、通算で10,000人を超えた。この日米運営体制は現在も続いている。

 リーマンショック危機を切り抜けた後、順調な運営を続けていたが、またもNYdVに試練が襲い掛かる。2020年に発生したコロナウイルスによるパンデミックにより、世界中を恐怖と混乱に陥る。ニューヨークは、未曽有の感染者数を記録、ロックダウン状態に陥った。人が屋外に出ることが制限されるという、ボランティアならではの人と直接交流することが出来ない状態となった。しかし、NYdVはボランティア活動を続けるべく、プログラムをオンライン化して実施したところ、ボランティア参加者は、ニューヨークを超え、米国のニューヨーク州以外や日本からの参加者も増えた。オンラインだからこそ広がったコミュニティで、コロナ禍のNYdVの活動は、ニューヨーク在住者だけでなく、ニューヨーク州外の仲間にも支えられた。


‐ キーワードは「楽しく!」アメリカの明るいノリと日本のきめ細やかな心配り

プログラムの提供を通じて、グローバルマインドをもった人材の育成を目指す!


 NYdVのボランティア参加者、運営スタッフは、日本から駐在で来ている駐在員、駐在家族の参加も多いため、人の移り変わりが激しいときがある。NYdVは、この人の移り変わりが激しいことは、必ずしもリスクではないと考えている。それはバックグラウンドが違うメンバーが集まるからこそ、個々のスペシャリティを活かし、様々なイノベーションがNYdV内でこれまで何度も起きてきたからだ。一方で、人が移り変わっても、不変なものもある。それは、アメリカらしく「楽しく!明るく!」でボランティアに取り組みつつ、日本らしい「きめ細やかな心配り」を受益者に提供していることがNY de Volunteerらしいカルチャーとなっている。受益者からも好評で、このカルチャーを好み、運営スタッフやボランティア参加者として、NYdVに協力してくれるニューヨーカーも多数いる。


 NYdVの目指すべきところは、「社会問題に挑み、広い視野を持ち、自発的に行動できるグローバル人材の育成」だ。これまでNYdVの提供するボランティア活動を通じて、多くの参加者が成長して、自分なりに問題意識を持ち、それに挑む姿を目の当たりにしてきた。当初は、参加希望者に多くのボランティアの機会を提供し続けていたが、この効果は、受益者の役に立つため、支えになるにとどまらず、参加者の成長にも寄与していた。このことから、NYdVは、受益者にとって有益なプログラムを提供し、社会問題是正に取り組むことに加え、参加者の視野を広げ、グローバルの環境で自ら問題意識を持って自発的に行動できる人材、社会問題の是正に取り組む人材を1人でも増やすことを目指している。日野をはじめとする理事、運営スタッフは、社会問題の是正と受益者の幸せ、参加者の成長を願っており、そのために「自分たちに何が出来るか?」を日々考え、歩み続けている。



はじめてみよう、NYでボランティア!




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日野紀子(NY de Volunteer 創立者/理事)


東京都出身。20代で渡米し、20年間ニューヨークに在住した。最初の10年間はIT業界企業で勤務し、2002年にNY de Volunteerを創立し代表を務める。日本に帰国後は、NY de Volunteerの理事となり、日本の学生向けグローバルリーダー育成プログラム、講演活動を主に務める。また、マイクロソフトとアクセンチュアのジョイントベンチャー企業アバナードのCorporate Citizenship Lead青山学院大学地球社会共生学部エリックゼミ・アドバイザー、お茶の水女子大学客員講師として、個人・企業の社会貢献の推進や人材育成に従事。


受賞歴

2005年 The New Yorker of the Week(NY1 News)

2007年『生活達人2005』(内閣府生活国民局)

2012年 世界で活躍し『日本』を発信する日本人

(日本国内閣官房国家戦略室)





NY de Volunteerの受賞歴はこちらに掲載しています。


NY de Volunteerへのご支援・寄付はこちらより受け付けております。



姉妹団体:Tokyo de Volunteer

(NYdVの姉妹団体。NYdVの元スタッフが日本に帰国後、東京でNPO法人“Tokyo de Volunteer” を2007年に設立。現在、様々な分野でボランティアの活動を行っている。)


NY de Volunteer 広報担当 高林 啓美

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